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セミナー報告

奥平綾子さんに聞く、母子分離の重要性——視覚支援がひらく「自分で決める」暮らし

2026年4月19日(日)、世界自閉症啓発デー関連企画として、ゲストトーク「母子分離の重要性〜おめめどうを作り・視覚支援を全国に広げる奥平綾子さんのお話」をオンライン開催しました。全国からリアルタイムで約40名の方にご参加いただきました。イベント後に、あとから配信のURLも申込者の方にお送りしました。

ゲストは、株式会社おめめどう代表取締役の奥平綾子(おくだいら あやこ)さん。22年にわたり、巻物カレンダー®やコミュメモ®など、自閉症のある人とのコミュニケーションを支える道具と実践を、全国各地でセミナーとセットで届けてきた方です。ファシリテーターは飯野由里子さん(東京大学バリアフリー教育開発研究センター 特任教授)、主催は平林ルミ(学びプラネット合同会社代表)が務めました。


おめめどうという「インディーズ」の22年

奥平さんはおめめどうの歩みを「インディーズバンド」に例えながら紹介してくださいました。メジャーな学会からはほぼ声がかからず、それでも全国各地で年間78回の講演会を重ね、現場の保護者や支援者に直接届けてきた22年。その原点は、次男が自閉症と診断された1995年(31年前)にさかのぼります。

ご自身が丹波で受けた「30人のクラスに障害のある子も当たり前にいる」インクルーシブな教育体験が、現在の思想の土台にあると語られました。

個別対応ではなく、「個別性の前にある普遍性」を活かす——フォーマットを統一した視覚支援ツールを通じて、多くの子どもたちが落ち着いて学習できるようになった実践の蓄積が、おめめどうの商品群に結実していることが伝わるお話でした。


「母子分離不全」と「エスパーをやめる」

トークの中心にあったキーワードが「母子分離」です。奥平さんが自身の子育てを振り返って気づいたのは、親が子どものニーズを先読みして動いてしまう「完全エスパー状態」の問題でした。

一見優しいこの対応こそが、本人から「意思表示の機会」と「試行錯誤する権利」を奪っている——。奥平さんはこれを「母子分離不全」と名づけ、「言わない」のではなく「構造化する(見える形で伝える)」へのシフトが必要だと強調されました。

エスパーをやめるための手立ては、気合や我慢ではなく、スケジュール・選択肢・予算軸を見える形で用意すること。構造化された環境があって初めて、本人は「自分で考える」余地を手にできる、というお話でした。


「構造化された自由」——時間軸から経済軸へ

スケジュールで時間軸を共有するところから始め、見通し(どうなるのか)を伝え、選択肢(何を選ぶか)を提示する。そしてその先に経済軸(いくら)を重ねる——。奥平さんはこの階段を、次男との暮らしの具体的なエピソードで語ってくださいました。

親の気分や判断に左右されない、一貫性のある枠組みの中でこそ、本人は「自分のことを自分で決める」力を伸ばしていく。これが、奥平さんの言う「構造化された自由」です。


責任を本人のものにする

印象的だったのは「責任を分ける」という言葉でした。失敗の結果を引き受ける機会を親が先回りして奪わないこと。選択肢を示すときに必ず「その他」の欄を設けて、親の手のひらを越える自由を残すこと。
飯野さんとの対話の中で、自閉症支援の現場でよく実践される「選択の支援」が、実は「親や支援者の手のひらの上での選択」になっていないか、という問いも立ち上がりました。見かけの支援ではなく、本人の試行錯誤を守る支援へ——その転換には、大人の側の覚悟が必要だと改めて感じさせられる対話でした。


余暇と役割、そして人生全体の設計

後半では、成人期の幸福度を左右する「余暇(一人で過ごせる楽しみ)」と「役割(誰かの役に立つ感覚)」の話にも及びました。見通しを立てる力、選ぶ力、予算で暮らしを回す力——これらは就労やくらしを支える土台であり、診断されたその時から設計を始めることが、本人と家族双方のメンタルを長く支えるという奥平さんの言葉に、参加者からの共感が集まりました。
視覚支援は「障害対応ツール」にとどまらず、親子双方が学び直し続けるための共通言語でもある——。そんな気づきを持ち帰れる2時間でした。


アーカイブ配信のご案内

当日ご参加いただけなかった方も、2026年5月18日(月)まで、同じPeatixページからあとから配信のお申し込みができます。録画(字幕つき)を限定公開URLで共有します。

ゲストトーク「母子分離の重要性」アーカイブお申し込み(Peatix)

自閉症のあるお子さんの保護者の方だけでなく、教育・福祉・医療の現場で支援に携わる方、そして「自分のことは自分で決める」を大切にしたいすべての方に届けたい内容です。


おめめどうについて

株式会社おめめどうのウェブサイトでは、巻物カレンダー®、コミュメモ®など、視覚支援の道具をお求めいただけます。奥平さんのご著書『自閉症・発達障害の人と伝えあおう、わかりあおう』『母子分離の重要性』などもこちらから購入可能です。

おめめどうウェブサイト
書籍・冊子


今後のセミナー・イベント予定

4月29日(祝・水)葛飾・ソラアル主催セミナー まなプラキッズプログラム連携団体である株式会社ソラアル(ソラアルPIA、東京都葛飾区)との共催イベントです。

ポッドキャスト「となりのニューロダイバーシティ」 平林ルミと飯野由里子のポッドキャスト、毎週金曜17:30更新。シーズン4「アタッチメントを探求する」を配信中です。 YouTubeで聴く

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