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まなプラコモンズ

「書くこと」と「考えること」を切り分ける——まなプラコモンズ 2026年5月

2026年5月16日(土)、まなプラコモンズ「ICTによる読み書きサポート勉強会」の2026年度第2回を開催しました。今回は珍しい土曜の夜の開催で、普段水曜には参加できない支援者・教育者が各地から集まりました。

前半は「アクセシビリティの基礎と展開」のWindows編。後半は、放課後等デイサービスで子どもたちと関わるスタッフによる実践報告です。


どんな端末にも、読み書きを支える機能が入っている

4月はiPad(iOS)を題材に、読み書きサポートで押さえておくべき機能が大きく4つの領域——画面表示とテキストサイズ/音声読み上げ/文字入力/OCR(光学文字認識)——に整理できることを確認しました。今回はその続きとして、学校や家庭でいちばん多く使われているWindowsを取り上げました。

ポイントは、これらの機能が特別なアプリを入れなくても標準で入っているということです。米国のリハビリテーション法(公的機関が調達する端末にアクセシビリティ機能を必須とする規定)の影響で、Windows・Chromebook・iPadのいずれにも、こうした機能が標準搭載され、年々充実しています。多数派にとって便利なものばかりを追求すると少数派が置き去りになる——その歯止めとして法律が機能している、という背景も共有しました。


Windows
11から「50音キーボード」が標準になった

今回いちばん伝えたかったのが、文字入力です。

タブレットやパソコンは、子どもが自分の考えを表現し、記録するための道具になります。読みが苦手だと書きも苦手になりやすいので、文字入力のしやすさは支援の鍵です。

地味ですが大きな変化として、Windows
11からオンスクリーンキーボードに50音配列が標準搭載
されました。Windows
10までは50音がなく、携帯電話のようなフリック入力しかありませんでした。ローマ字入力が難しい子にとって、画面上で50音から文字を選んで打てるようになったことは、使える子の幅をぐっと広げます。小学1年生が自分の名前を探して打つこともできますし、ひらがなが使える子なら知的障害のある子にも届きます。

音声入力も、キーボード上のマイクマークから、あるいは「Windowsキー+H」で起動できます。Wordの原稿用紙設定(400字詰めなど)と組み合わせれば、声で話して作文を書き、印刷して学校に持っていくこともできます。

読み上げは、Microsoft Edgeの「イマーシブリーダー」が便利です。読みたい文章を選んで開くと、背景色・文字サイズ・行間を調整でき、音声読み上げ・翻訳・要約のほか、読む幅を狭める機能もあります。眼球を大きく動かして文章を追うのが苦手な子——「iPhoneのほうが読みやすい」と言う子——に、特に有効です。同じイマーシブリーダーは、Word・OneNote・Teams・Formsにも入っています。


実践報告——「日記や作文を書きたいけれど」

後半は、葛飾区亀有の放課後等デイサービス「ソラアル」で子どもたちと関わる河髙素子さんによる実践報告でした。テーマは「日記や作文を書きたいけれど」。子ども自身が感じている「書くことの難しさ」を丁寧にほどいていく報告でした。

河髙さんは、日記が書けない理由をひとつずつ分解してくれました。その日あったことをうまく思い出せない(放課後に来て「1時間目、何だっけ」と考えているうちに時間が終わる)。先週末まで遡るのがしんどい。「日記には特別なことを書くべきだ」と思い込んでいて、日々のちょっとしたことを書いていいと思えない。どれくらいの分量を書けばいいか見通しが立たない。文字を思い出すのが大変で、メモ書きすらしんどい——。

そこで取り入れているのが、マインドマップです。書きたい日のことを思い出し、整理するために、スタッフが子どもと一緒にマインドマップをつくります。いきなり朝のことを聞いても思い出せないので、「6時間目は何だった?」と直近からさかのぼる形で問いかけていく。すると「実は今日は5時に起きた」といった話がぽろりと出てきます。

河髙さんの言葉で印象に残ったのは、「書くことと考えることを切り分ける」という視点でした。文字を書く負担と、何を伝えたいかを考える作業を分けてあげること。そして、こちらの質問が誘導になっていないか、支援者が聞きたいことを聞いてしまっていないかを、つねに気にかけている——その率直な語りに、支援の難しさと誠実さが伝わってきました。運動会の時期でも、本人にとっては給食の話のほうがよほど重要だったりするのです。

報告後の質疑では、「会話の延長線上に作文がある」という話にもなりました。言葉を使って遊び、知っている言葉・使える言葉を増やしていく経験が、書くことにつながっていきます。


参加者の声

「Windows
11からタッチキーボードがあると聞いて、早速子どもに使ってみたい」

「仕事でずっとWordを使ってきたのに、縦書きができることを今日初めて知った」

「Apple製品は使いやすいけれど、Windowsにも同じような機能があるのに見つけにくい。知らないと提供できないと改めて思った」

「発達特性のある子は学校では『目立つか/離席するか/感情をコントロールできるか』で見られがちだけれど、その背景には『わからない』『伝わらない』がある。学びという窓から子どもにアクセスするほうが、回り回って落ち着いたりコミュニケーションが取れたりする——それを世の中に発信できたら」


今後の予定

次回は6月14日(日)10:00〜12:00、「アクセシビリティの基礎と展開」のChrome編に加え、引き続き現場で実践する支援者からの報告コーナーを設けます。

◎ 5月24日(日)10:00〜12:00 ゲストトーク:水野カオルさん(Ponteとやま)
富山・砺波市で宮の森カフェとシェアハウスを拠点にコミュニティをつくってきた歩みと、日々の運営をお話しいただきます。カフェがあって、学びの場があって、働く場がある。食べることも、学ぶことも、働くことも、ぜんぶ同じ場所のなかにある。そこに集う人たちそれぞれの「生きづらさ」や「自分らしさ」が、いつのまにか地域の風景の一部になり、地域の価値そのものに変わっていく——Ponteとやまは、そんな場所です。
申し込み → https://guestpontetoyama.peatix.com/


まなプラコモンズとは

まなプラコモンズは、読み書きサポートに関わる支援者・教育者が月1回オンラインで集まり、現場の実践と知識を共有する場です。2024年4月から毎月継続して開催しています。参加者はフリースクール、発達相談室、放課後等デイサービス、特別支援学級、通級指導教室など、全国各地でさまざまな形で子どもたちと関わっています。

まなプラキッズプログラムの会員向けに開催しており、会員は毎回の録画アーカイブも視聴できます。

参加をご希望の方はこちらのページをご覧ください。
https://manabiplanet.com/kids/